駅の階段。上りは息が切れるけれど、まだ普通に上がれる。
でも下りのとき、手すりに手が伸びる。一段ずつ慎重になる。膝に響く感じがある——。
「上りより下りのほうがきつい」というのは、実は理由があります。そして下りのほうに先に変化が出ることも、珍しくありません。
上りと下りで、筋肉の働き方が違う
同じ階段でも、筋肉の使い方が逆になります。
上りは、太ももの前側(大腿四頭筋)が縮みながら身体を持ち上げる動きです。これを短縮性収縮と呼びます。心臓や呼吸への負担は大きく、息は上がります。
下りは逆で、同じ筋肉が伸びながらブレーキをかける動きになります。伸張性収縮と呼ばれるものです。重力で落ちようとする身体を、一段ごとに支えて止めている状態です。
なぜ下りに先に出るのか
ブレーキをかける動きは、筋力だけでなく「力の出し方の調整」も必要になります。ゆっくり伸ばしながら、ちょうどよい強さで止める。この細かいコントロールが要求されます。
筋力が落ちてくると、この調整が先に難しくなります。結果として、こういう変化が出ます。
- 手すりに手が伸びる。無意識に支えを探している状態です
- 一段ずつ、足を揃えて下りるようになる
- 膝に響く感じがある。着地の衝撃を筋肉で吸収しきれていない
- 下りのほうが時間がかかるようになった
そしてもうひとつ。下りは転倒のリスクが高い動作でもあります。厚生労働省の調査では、家庭内における高齢者の事故のうち転落の発生場所として階段が挙げられており、階段は住宅内で注意すべき場所とされています。
今日からできる、お金のかからない工夫
まず安全面から。そのうえで、下りで使う動きを日常に入れます。
- 下りは手すりを使う。使うことは悪いことではありません。転倒を避けるほうが優先です
- 一段ずつ、急がない。人の流れに合わせて速く下りる必要はありません
- 座る動作をゆっくりにする。椅子に座るとき、3秒かけて腰を下ろす。これが下りと同じブレーキの動きです。座る回数だけ反復できます
- 階段は上りだけ使う。上りで階段、下りはエスカレーターやエレベーター。膝の負担を避けながら運動量は確保できます
- かかとの上げ下げ。下ろすときをゆっくりにすると、ふくらはぎのブレーキの動きになります
3つ目がいちばん取り入れやすいと思います。「座る前に3秒」だけです。新しい時間を作る必要がありません。
痛みがある場合は、まず医療機関へ
ここは明確にお伝えします。
膝や腰に痛みがある場合、原因を確かめないまま運動を始めないでください。動かしていい痛みと、休ませるべき痛みは別のものです。自己判断で続けると悪化させることがあります。
● 膝が腫れている・熱をもっている
● 動かすと引っかかる・音がする
● 片脚だけ急に力が入らなくなった
● 痛みで夜眠れない
柔道整復師として16年、整形外科クリニックで働いてきました。現場でよく見たのは、「痛いけれど原因が分からないまま、自分で何かを始めてしまう」ケースです。まず診てもらってください。
まとめ
- 上りは筋肉が縮んで持ち上げる動き、下りは伸びながらブレーキをかける動き。求められるものが違います
- ブレーキの動きは筋力と調整力が必要なため、下りに先に変化が出ることがあります
- まずは手すりを使う・急がない・座る前に3秒。お金も時間もかかりません
- 痛みがある場合は、運動より先に医療機関へ。原因を確かめてからです
痛みがなく、筋力の面で気になるという方には、ご相談に応じて選択肢をご案内しています。