「夕方になると脚がだるい」
この言葉は、立ち仕事の方からも、デスクワークの方からも聞きます。同じ表現なのに、起きていることは違います。
柔道整復師として16年、いろいろな職業の方の脚に触れてきました。触った感触も、訴えの内容も、職業によってはっきり傾向が分かれます。
原因が違えば、やることも変わります。
同じ「だるい」でも、中身が違う
脚の血液を心臓へ押し戻しているのは、ふくらはぎの筋肉です。筋肉が縮むと血管が圧迫され、血液が上へ送られる——筋ポンプ作用と呼ばれる働きです。
この作用は、筋肉が動いたときにしか働きません。ここを起点に考えると、2つの職業の違いが見えてきます。
| 立ち仕事 | 座り仕事 | |
|---|---|---|
| 筋肉の状態 | 使い続けている | ほとんど使っていない |
| 筋ポンプ作用 | 働いているが、休みがない | 長時間止まっている |
| 訴えの傾向 | ふくらはぎの張り・重さ 足裏の痛み・腰の反り | 脚全体のだるさ・冷え 股関節のつまり感 |
| 触った感触 | 筋肉が硬く、張っている | 筋肉が柔らかく、力が入りにくい |
| 必要なこと | 休ませる・ゆるめる | 動かす・使う |
一番大事なのは最後の行です。必要なことが逆です。
立ち仕事の方に「もっと歩きましょう」と言うのは、多くの場合ずれています。逆に座り仕事の方に「休ませましょう」と言っても、状況は変わりません。
立ち仕事の方に起きていること
販売、調理、美容、看護、保育、工場——立ち続ける仕事では、ふくらはぎが一日中働いています。
ただし、同じ姿勢で立ち続けると筋ポンプは十分に働きません。歩くように筋肉が伸び縮みするのではなく、姿勢を保つために緊張し続ける状態になります。結果として、筋肉は硬くなるのに循環は良くならない、という状態が起きます。
触ると、ふくらはぎがパンパンに張っている方が多いです。「揉んでほしい」と言われる典型です。
加えて、立ち姿勢を保つために腰が反りやすく、脚だけでなく腰にも負担が出るケースをよく見ました。
座り仕事の方に起きていること
デスクワーク、運転、在宅勤務。座っている間、ふくらはぎはほとんど動いていません。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」でも、座位行動(座りっぱなし)が長いこと自体が健康リスクと関連するとされ、立ち上がって身体を動かすことが推奨されています。運動時間を作る以前に、座り続けないことが挙げられているのが特徴です。
触った感触は立ち仕事の方と対照的で、筋肉が柔らかく、力が入りにくい方が多い印象でした。張っているのではなく、使われていない状態です。
そして厄介なのが、使わないことによる筋力低下(廃用性の低下)です。動かない期間が続くと、それ自体が筋力を落とします。落ちるとさらに動かなくなる——この循環に入りやすいのが座り仕事です。
それぞれに合った、お金のかからない対策
やることが逆になるので、分けて書きます。
立ち仕事の方へ:休ませる・ゆるめる
- 片脚を少し高い所に乗せる。台や踏み台に片足を置くと、腰の反りが減ります。左右を時々入れ替えて
- その場で足踏みをする。立ち止まっているときこそ、あえて動かす。筋ポンプが働きます
- 帰宅後、脚を高くして休む。クッションを入れて15分程度
- ふくらはぎを揉むより、ゆっくり伸ばす。壁に手をついて、かかとを床につけたまま前に体重をかける
- 湯船に浸かる。シャワーだけでは、温熱・静水圧・浮力のうち温熱の一部しか得られません
座り仕事の方へ:動かす・使う
- 30分〜1時間に一度、立ち上がる。これが最優先です。トイレやコピーのついででも構いません
- 座ったまま、かかとの上げ下げ。デスクの下で20回。回数より、こまめに
- 座る前に3秒。椅子に座るとき、勢いよく落ちずに3秒かけて下ろす。太ももの前側が働きます
- 足を組む癖をやめる。片側に偏った圧迫が続きます
- エスカレーターより階段。上りだけで十分。下りは膝の負担が大きいので無理をしない
動かせない時間がある場合
とはいえ、会議が続く日、締切前、長距離運転。物理的に立てない時間はあります。
そういう場合の選択肢として、電気刺激で筋肉を動かす機器があります。当店で扱うパルストレーナーは、ベルト状の電極を両脚に巻いて下半身の筋肉を動かす運動機器です。座ったまま、20〜30分で使えます。
ここで一点、正直に書いておきます。この機器が向いているのは「動かす」が必要な座り仕事の方です。立ち仕事で筋肉が張り切っている方の場合、まず休ませることが先で、そこに刺激を加えるのは順序が違います。
また、歩く・立ち上がるの代わりになるものではありません。上に書いた無料の対策を先に、そのうえで「どうしても動かせない時間がある」場合の補いとして考えていただくのが妥当だと思っています。
まとめ
- 立ち仕事は使い続けて張っている、座り仕事は使っていなくて働いていない。同じ「だるい」でも中身が逆です
- 立ち仕事は休ませる・ゆるめる、座り仕事は動かす・使う。対策も逆になります
- まずは自分がどちらなのかを確認してから。やり方を間違えると、かえって疲れます
脚の痛みやだるさが続く場合、片脚だけ急に腫れる場合などは、自己判断せず医療機関にご相談ください。