魚焼きグリルで焼いたはずなのに、皮はしんなり、身から水っぽい汁が出て、なんとなくベチャッとした仕上がりになる——。
「魚の鮮度が悪かったのかな」「焼き時間が足りなかったかな」
そう思っていたのですが、調べてみると原因は別のところにありました。熱の伝わり方の違いです。
「焼く」といっても、熱の伝わり方は3種類ある
調理の熱の伝わり方は、大きく3つに分けられます。
| 伝わり方 | どういうものか | 身近な例 |
|---|---|---|
| 伝導 | 触れているものから直接伝わる | フライパン、鉄板 |
| 対流 | 空気や水の流れで伝わる | オーブン、揚げ物、茹でる |
| 放射(輻射) | 離れていても赤外線で伝わる | 炭火、グリル、遠赤外線ヒーター |
焼き魚が難しいのは、この3つが混ざるからです。
フライパンで焼くと、鍋底に触れている面だけが伝導で強く加熱されます。表面の温度が先に上がるので、中まで火が通る頃には外側が焦げている。しかも身から出た水分がフライパンに溜まり、下面は蒸し焼きの状態になります。これが「皮がベチャッとする」の正体です。
一方、炭火焼きの魚が違って感じられるのは、放射(赤外線)が主役だからです。遠赤外線は食材の表面で吸収されて熱に変わる性質があり、表面の水分を素早く蒸発させます。だから外はパリッと、中はしっとり仕上がりやすい。水分もフライパンのように溜まりません。
逆に、表面温度の上がり方が緩やかな熱源では、水分が蒸発しきる前に加熱が進んでしまうため、皮や身に水分が残ってベチャッとしやすくなります。「焼き時間が足りない」のではなく「熱の質」が仕上がりを左右していたわけです。
今日からできる、お金のかからないコツ
道具を変えなくても、焼き方だけで変わる部分があります。
- 焼く前に水分を拭き取る。キッチンペーパーで表面の水気を取るだけで、ベチャッとしにくくなります
- 塩をふって10〜15分おき、出てきた水分をもう一度拭く。臭みも一緒に抜けます
- 予熱してから乗せる。冷たいフライパンに置くと、温まるまでの間に水分が出続けます
- むやみに動かさない。何度もひっくり返すと身が崩れ、水分も出やすくなります
- フタをしない。フタは蒸し焼きになるので、パリッとさせたいときは逆効果です
- 魚焼きグリルを使う。グリルは赤外線で焼く構造なので、フライパンより焼き魚向きです
グリルを使う場合は、さらにこの3点を。
- 庫内をしっかり予熱してから入れる。冷えた庫内に入れると表面温度が上がりきらず、水分が抜けにくくなります
- 魚同士をくっつけない。間隔を空けると、熱が全体に均等に当たります
- 水受けトレーの水を忘れない。水を張るタイプは、焼く直前に入れておきます
これだけで仕上がりは変わります。まずはここからで十分です。
それでも気になる人の選択肢
「グリルは洗うのが面倒」「毎回うまくいくとは限らない」という声もよく聞きます。
加熱方式そのものを変えるなら、ラジエントヒーターという選択肢があります。トッププレート下のヒーターが赤外線を出し、その熱で加熱する方式です。IHのような電磁誘導コイルを使わないため、鍋底の材質を選びません。土鍋・中華鍋・アルミ鍋・耐熱ガラス鍋も、そのまま使えます。
当店では2つのタイプを扱っています。
- ビルトインタイプ:キッチンに組み込む形。ガスコンロからの入れ替えに
- 卓上タイプ:工事不要で置くだけ。食卓で焼きながら囲めます
焼き上がりの違いは言葉で説明しづらいので、実際に焼いたものを食べていただくのが早いと思います。
まとめ
- 焼き魚がベチャッとするのは、フライパンの伝導熱+溜まった水分が原因。魚の質の問題とは限りません
- まずは水分を拭く・予熱する・フタをしない・グリルを使うの4点から。それでも気になるなら加熱方式を見直す
今夜の焼き魚、キッチンペーパーで拭くところから試してみてください。